ギャンブルで勝てない理由、投資で勝てる理由 ――マイナスサムとプラスサムの世界を知る
かつて自分はスロットの前に座り続けていた。
「今日は勝てる気がする」「設定が入っている」――そんな感覚だけを頼りに、何度も何度もレバーを叩いた。
だが、どれだけ熱くなっても、最後に残るのは財布の軽さと虚無感だった。
そんな自分が今はインデックス投資をしている。
スロットと投資、どちらも「お金を増やす」行為に見えるが、仕組みはまったくの別物だ。
今日は、その根本的な違い――マイナスサムゲームとプラスサムゲームの世界について、わかりやすく話してみたい。
ギャンブルは「マイナスサムゲーム」――勝っても誰かが損をする
まず、ギャンブルはマイナスサムゲームだ。「マイナスサム」とは、全員の勝敗を合計するとマイナスになるゲームのこと。 パチンコ・スロット・競馬・カジノ、すべてこの構造にある。
なぜなら、胴元(店・主催者)が必ず「控除率」を取るからだ。 たとえばスロットの機械割が95%だとすれば、100万円分回しても理論上は95万円しか戻らない。 残りの5万円はホールの利益として消える。つまり、プレイヤー全体で見れば確実にマイナス。
勝つ人がいれば、その裏でそれ以上に負けている人がいる。
勝ち続けるには、他人の負けを奪い取るしかない。 そしてその「他人」もまた、必死に勝とうとしている。
長く続ければ続けるほど、機械割の壁が立ちはだかり、確率がすべてを均していく。
短期的に勝てても、最終的には数学が勝つ――それがマイナスサムゲームの恐ろしさだ。
投資は「プラスサムゲーム」――世界経済と共に増える仕組み
一方、インデックス投資はプラスサムゲームだ。
「プラスサム」とは、全体の合計がプラスになっていくゲーム。
世界経済が成長する限り、企業の利益は増え、株価も上がる。
つまり、参加者全体で見てもプラスになる仕組みが存在する。
S&P500に代表されるインデックスファンドは、アメリカ主要500社の株価を時価総額加重平均化したものだ。
この500社は常に入れ替えられ、弱い企業は抜け、強い企業が入る。 結果として、指数全体は「勝ち残り続ける企業の集まり」になる。
自分は2020年から旧NISAで積立を始め、2024年からは新NISAでS&P500に毎月10万円を投資している。
投資を始めて4年程経ったころ、日々の値動きに一喜一憂することがなくなった。
1日で3〜5%下がっても、「いつものこと」と感じる程度だ。
なぜなら、投資は「戦うゲーム」ではなく、仕組みに乗っかるゲームだから。
「機械と戦う」か、「仕組みに乗る」か
スロットを打っていた頃、自分は常に「機械と戦っていた」。
設定6を探し、イベント(特日)を追いかけ、データカウンターとにらめっこ。
確率を少しでも自分の味方にしようと、頭をフル回転させていた。
だが、インデックス投資は真逆だ。
勝とうとしない。焦らない。
むしろ「仕組みに身を任せる」ことが成功の鍵になる。
毎月決まった日に自動で積み立てるだけ。 レバーを叩く代わりに、時間と複利が働いてくれる。
この感覚は、ギャンブル時代の「熱狂」とは正反対だが、
数年後の資産残高を見たときに感じる喜びは、あの頃のドーパミンを遥かに超える。
なぜなら、それは再現性のある勝ちだからだ。
数字で見る「積立ての現実」――1・3・5・10万円の未来
ここで、少し現実的な話をしてみよう。 もしあなたが毎月1万円、3万円、5万円、10万円を「新NISA」でS&P500やオルカン等の手数料の低い優良インデックスファンドに積み立てていったとする。
運用期間は20年。 想定利回りは年3%・5%・7%の3パターン。
積立額をシンプルに比較してみると、20年間での「投資元本」はそれぞれ以下の通り。
- 毎月1万円 → 元本240万円
- 毎月3万円 → 元本720万円
- 毎月5万円 → 元本1200万円
- 毎月10万円 → 元本2400万円
ここに複利がかかると、どうなるのか―― 「設定6のスロット」に例えて考えてみる。
積立シミュレーション――時間と複利の力
では、実際に数字を見てみよう。 毎月「1万円・3万円・5万円・10万円」を新NISAで積み立て、20年間運用した場合、 想定利回りを年3%・5%・7%とした結果は次の通りになる。 (※複利計算・税引きなし・単純モデル)
- 年3%:
1万円→約326万円/3万円→約978万円/5万円→約1630万円/10万円→約3260万円 - 年5%:
1万円→約412万円/3万円→約1236万円/5万円→約2060万円/10万円→約4120万円 - 年7%:
1万円→約492万円/3万円→約1476万円/5万円→約2460万円/10万円→約4920万円
元本240万円(毎月1万円)でも、年5%で20年積み立てれば約1.7倍になる。 そして毎月10万円なら、20年で約1700万円のプラス。 これはレバーを叩かず、放置しておくだけの結果だ。
ギャンブルのように「一晩で10万円勝つ」ことはない。 だが、確実に資産が積み上がる。 これこそが、プラスサムゲームの威力だ。
年利5%=スロットで言えば「設定6」を毎日打ち続けるようなもの
投資初心者からよく聞かれるのが、「年利5%ってすごいの?」という質問だ。 スロットに例えるなら、それはまさに「設定6を毎日ブン回す」ような状態だと感じている。
スロットの設定6が機械割110%(=1万円入れたら1万1000円返ってくる)だとすると、 長期的には確実にプラスになる。 ただし、現実には「毎日設定6に座る」ことはほぼ不可能。 店も商売だから、常に甘い台を置くわけがない。
一方、インデックス投資は違う。 仕組み上、世界全体の平均成長=設定6が自動で選ばれていく。 どの企業が一時的に負けても、指数は勝ち続ける企業に入れ替わる。 つまり、負けるリスクを「分散」と「時間」で打ち消してくれる。
かつて自分は「設定を読む」ことに人生を賭けていた。 だが今は、「世界経済が伸びる」という設定を信じて、淡々と積み立てている。 レバーを叩く代わりに、積立ボタンを一度押すだけ。 そのシンプルさが、かつてのギャンブル脳に一番効いた薬だった。
マイナスサムでは「続けるほど負け」、プラスサムでは「続けるほど勝つ」
ギャンブルは短期的に勝てることがある。 それが厄介だ。 一度の大勝ちが「もう一度」を誘い、脳がドーパミンで満たされる。 だが、その仕組み自体が継続的に損を出すよう設計されている。
投資は逆だ。 最初の数年は退屈で、利益がほとんど見えない。 だが、複利が効き始める中盤以降、曲線が一気に立ち上がる。 まるで「設定6を閉店まで回した」あとのように、いやむしろそれ以上にグラフが右肩上がりになっていく。
どちらのゲームを選ぶかは自由だ。 ただ、自分は「戦う」よりも「仕組みに乗る」方が性に合っていた。 焦りも、店の煽りも、波の荒さもない。 その代わりにあるのは、静かな安心感と、積み重ねの実感だ。
仮に毎日絶対設定6が打てるとしても仕事もあるし、体が持たない。そもそも時間がもったいない。
まとめ――勝ち続けるために、「戦わない選択」を
ギャンブルは「戦う世界」、投資は「育てる世界」。 両者の違いを理解した瞬間、自分はようやくお金との付き合い方を変えられた。
マイナスサムゲームでは、長く続けるほどに損をする。 プラスサムゲームでは、長く続けるほどに得をする。 この違いを知っているかどうかが、人生の分かれ道になると感じている。
自分はもう、ホールの開店を待たない。 代わりに、マーケットの「時間の味方」を信じている。 そして今日も、何も考えずに積み立てを続ける。 勝とうとしないことで、気づけば勝っていた――そんな生き方が、一番自然だと思う。